母の一周忌を前に思うこと⑤



母はガンが転移して溜まった胸水を抜く為に

胸腔に管を入れていましたが


それで治癒が望めるわけでなく、衰弱するのを待つだけなので

本人の希望と、先生の判断で

管を抜きました。



後は胸水がどんどん溜まり

死を迎えるだけとなりました。



母は単身赴任先から帰省していた私の夫に

「お願いがあるんよ。明日母(私の祖母)のお墓に

連れて行って欲しい。」と頼みました。


私の夫は他県に単身赴任中で、その時はちょうど

帰省中でしたが

明日また赴任先に6時間運転して帰る予定でした。



母が元気でそんなことを言うのなら

私は「何言ってるの、そんなんできるはずない。」と、母に言ったと思います。

長距離を運転して帰る夫に、朝早くからこれまた遠方の母方のお墓に行ってなんて

とても気の毒で…。



でも、母も普通ならそんなことは頼まない。

私はしばらくどうしても仕事を休めない。

どうしようどうしよう。



母はもう自分には時間がないのがわかっている。



母の気持ちが痛いほどわかるから

私は何も言えずにいました。



でも、夫は迷うことなく

「うんうん、わかったお義母さん。明日行こう。」

と快諾してくれました。



次の日、私の用意したお花と母の車椅子を車に積み込んで、夫と母は無事にお墓参りと

昔を懐かしむように最寄りの駅やお城に寄り道もしたそうです。

そして2人でうどんを食べて帰ってきました。




それからほどなくして

母は亡くなりました。




夫は今でも、母と一緒に入ったうどん屋さんの前を通るたびに

「お義母さん、あの時うどん美味しそうに食べたんよなー。」とつぶやきます。


ありがとう、夫。


あなたには感謝しかありません。